矯正相談を受けていると、患者さまから「インビザラインって普通の矯正より失敗しやすいんですよね?」と言われることがあります。
 インビザラインはここ数年で改良され、多くの方の治療に取り入れられて来ました。しかし、ワイヤーでの矯正もそうであるように「絶対に」失敗しない治療はありません。そこを上手に方向転換するのが歯科医師の腕の見せ所なのですが、それが難しい場合もあります。


インビザラインで失敗する原因とは?


 インビザラインでの歯科矯正とはどのようなものですか?でもお伝えしましたが、インビザラインのようなマウスピース矯正は従来のワイヤー矯正とは異なる点が多いため、歯科医師と患者さま双方のインビザラインに対する理解が必要となります。
 ここでは大きく7項目挙げさせていただきます。

1 マウスピースの使用時間が短かった


  インビザラインで推奨されるマウスピースの使用時間は、1日20時間以上です。これは、食事と歯みがき以外の時間はいつも装着する事を意味します。「めんどうくさいから」「しゃべりにくいから」「勉強や仕事に支障がでるから」などという理由で使用時間が短くなると、治療が進まないのはまだ良い方で後戻り(以前の歯ならびに近い状態へ戻ってしまう事)を起こす場合があります。
 そのようになると、合わなくなってしまったマウスピースの作り直しをするのに時間がかかりますし、歯ならびが戻った分治療期間が長くなってしまいます。

2 マウスピースがしっかりハマっていなかった



 歯の移動をおこなう事から、マウスピースは徐々に形が変わっていきます。そのため、場合によっては少しマウスピースが歯から浮き上がってしまう事があります。その際、チューイーと呼ばれる物を咬んでマウスピースを押し込むように説明を受けます。(歯を食いしばって押し込むと、マウスピースが割れてしまう事があるので、そのようなことはしないでください)
 しっかり押し込まないとアタッチメント(歯に設置されるプラスチックの出っ張り)が、マウスピースにしっかりと合いません。その合わない状態でさらに進めるとアタッチメントがどんどんマウスピースのくぼみから離れてしまい、まったく歯が動かなくなってしまいます。

3 マウスピースの交換時期を適切に守れなかった



 インビザラインは数日~数週間ごとにマウスピースを交換します。そして、その交換の時期は歯科医師から指示をされます。
 この交換のタイミングを守らないと、以下の事が起こります。
 タイミングが短い⇒歯の動きが中途半端な状態で次のマウスピースに移行するため、歯が想定通りに動かなくなる
 タイミングが長い⇒それ以降の交換の時期がズレる、もしくはタイミングが短くなる
 また、マウスピースの装着をサボっていたからと言って、歯科医院に行く数日前から急いで短い間隔で交換したとしても、そのほとんどの装置が合わなくなってしまいます。

4 インビザラインでの治療が難しい症状だった



マウスピース矯正特有の事情もあって、インビザラインでの治療が難しい症状がいくつかあります。
 抜歯が必要なくらい凸凹が大きい症状であったり、過蓋咬合(咬み合わせが深く下の前歯がみえにくい状態)、骨格的な不正咬合がその代表格です。
 ただし、これは後の治療計画の話にもなるのですが、様々な工夫をくわえればインビザラインで治療可能になるものがありますし、治療が難しければいくら患者さまからご要望があったとしてもお断りすれば良いだけです。   
 その見極めが歯科医師にとって重要なのではないでしょうか(治療中に想定外のこともあるので、なかなか難しくもあるのですが、、、)。 

5 歯みがきなどの口腔ケアが不適切だった



 インビザラインは食事と歯を磨く時以外、マウスピースを装着している必要があります。
 ワイヤー矯正に比べて歯は磨きやすいはずなのですが、歯みがきなどの口腔ケアが不適切であると、マウスピースの中で菌が繁殖したり酸性状態が残ってしまうために、虫歯や歯周病になりやすくなります。
 歯科矯正治療は、そのような歯や歯ぐきの病気がある状態では進められないので、病気の治療の時間だけ矯正の治療期間も長引いてしまいます。

6 治療計画に無理があった(患者さまからのリクエストによるもの)



 「できれば早く治療を終わりたい」「できれば痛くない治療がしたい」「できれば歯を抜きたくない」
 実際に治療される患者さまであれば、そのようなご希望があって当たり前なのですが、状況によってはすべてを叶える事が難しい事もあります。
 例えば歯列矯正は歯を抜かなきゃいけませんか?でご説明しましたが、歯を抜きたくないという理由だけで無理な症状を治療すると、理想的な咬み合わせと違うものが出来上がる可能性があります。
 そもそもそうならないように治療計画を立てるのが歯科医師の役割なのですが、「完璧な咬み合わせじゃなくてもいいから、治療してほしい」などと患者さまから言われて押し切られた挙句、治療後に「何でこんな治療したんだ」とお叱りを受ける事となります。私は以前、都心の歯科医院で勤務していたのですが、田舎に比べると都心部の方がよくありがちなケースです。

7 治療計画に無理があった(歯科医師の未熟さによるもの)



 歯列矯正治療は歯科医師であれば誰でもおこなえます。また、ワイヤー矯正に長けた歯科医師であっても、インビザラインに関しては経験があまり無い場合があります。
 その場合、ワイヤー矯正での治療計画をそのままインビザラインでもできると考えてしまう可能性があります。
 それが上手くいけばいいですがいかない症状もあるため、歯科医師自身の経験や知識が必要となります。


まとめ


 インビザラインを代表とするマウスピース矯正は、基本的に「自己責任の歯科矯正治療」です。
 そもそも歯列矯正自体が、ワイヤー矯正であってもしっかり時間をかけて歯を磨くなど、治療を受けている患者さまの協力が大なり小なり必要になってくるものです。その上、マウスピース矯正には「自分で装置を装着する」という協力が必要となってきます。
 それができないのであれば、初めからワイヤーで治療すべきですし、それもやりたくないとの事なら歯列矯正治療自体あきらめてください。
 歯列矯正は地味で地道な治療です。ご理解頂ければ幸いです。

医療法人KOM
いわぬま矯正歯科クリニック

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